タンザナイト

タンザナイトのイメージ写真

角度によって色が違う

タンザナイトは、サファイアのような深く美しいブルーに、角度によって朱が射すことが何とも魅力的な宝石です。

青だけでもサファイア並みに綺麗なのに、そこに朱が射しこまれる……これがあまりにも絶妙なんですよね。他の宝石からしたら、サファイアに匹敵する青い色を持ってるだけで羨ましいのに、さらに朱が入るなんてずるい!って嫉妬を集めそう。本当にずるいくらい美しい宝石です。

その美しさは、多色性という、結晶の方向によって吸収される色が異なる性質によってもたらされるものです。つまり光を当てる角度=見る方向によって色が違うんですね。タンザナイトの場合は強い三色性があり、ある方向から見ると青く、別の方向から見ると紫色、また別の角度から見ると朱いという特徴を持っています。

タンザナイトの美しさは、よくキリマンジャロの夕景に喩えられます。それは、タンザナイトの深い青に朱が射しこむ姿が、青い夜空と朱い夕焼けが同時に見られるほんの僅かな時間の空の情景に似ているためです。

スピード出世を果たしたロマンティックな宝石

実はタンザナイトは、鉱物自体は1700年代か1800年代初頭には発見され、『ゾイサイト』という結構ゴツい名前がつけられていました。

でも1967年に青いゾイサイトが見つかると、その石の美しさに対して名前が美しくないということが問題視されました。「『ゾイサイト』って名前じゃ売れなさそう。何となく『スーサイド(自殺)』って言葉に似てるし」ということで、ジュエリーブランドのティファニーが『タンザナイト』という名前をつけ、大々的にプロモーションをおこないました。

すると、他の宝石をごぼう抜き。またたく間に人気を獲得し、今や12月の誕生石に名を連ねるほどのスピード出世を果たしたのです。

ちなみに余談ですが、僕は『タンザナイト』という名前は、てっきり『Tanzanight』なのだと思ってました。実は『ナイト』とか『アイト』とかっていうのは「石」を意味する言葉で、ラテン語の『ite』が語源。他の石も『ロードナイト』『プレナイト』『カイヤナイト』『アイオライト』『アパタイト』……といった具合。『Tanzanight(タンザニアの夜)』ではなく『Tanzanite(タンザニアの石)』が正解なんですね。

色の基準はサファイア

タンザナイトの色は、よく「青~青紫」などと紹介されており、少し紫がかった青が高品質と思われがちですが、それはちょっと間違っています。最も高く評価されるのは、高品質のサファイアのような色のもの。基本的に宝石の青の評価は、サファイアが基準であることを覚えておいてください。

多色性によって青と朱が混ざり合うため、高品質のものでも少し紫がかって見えますが、最高級のタンザナイトは、真上から見ると紫の感じられない濃厚な青で、少し傾けると朱が射すようなイメージのものです。

ただしそのような品質のタンザナイトには、なかなか出会うことができません。5ctくらいはないと、どうしても薄く紫がかって見えます。また、青は最高級のサファイアのような色合いでも、射しこむ色が朱ではなく紫色だと少しだけ評価が下がります。

ちなみに、ティファニーのサイトですら、タンザナイトの色を『ブルーバイオレット』と表現していました。これは僕の推測ですが、恐らく大半のタンザナイトは紫がかった色味なので、それを売るためには『ブルーバイオレット』と言わざるを得ないのではないでしょうか。

一方、宝石の世界的な研究機関であるGIAのサイトには「タンザナイトで最も珍重される色は、上質サファイアに似た純青色、または独自の強烈なバイオレット・ブルー」と書かれていました。最高評価は『純青色』で、たとえ紫がかっていても『ブルーバイオレット』ではなく『バイオレット・ブルー』であることに着目してください。

タンザナイトの評価基準

タンザナイトを購入する際に、最優先すべきなのは、既に書いたように「色」です。できるだけ色の抜けがなく、紫がかっていない純青色のものを選んでください。

といっても5ctくらいないと、どうしても抜けはあります。そのため、少し不格好でも、厚みのある石を選ぶのも手です。

また、できるだけ透明で、インクルージョンのないものを選んでください。拡大してようやく内包物が見えるようなものはセーフですが、目に見える内包物があると、評価がガタ落ちします。

それと最近は、青いタンザナイトが少なくなっており、バイカラーとかグリーンのものとかが出てきました。これらは、サファイアの代替品くらいに考えて、カラーバリエーションを愉しむにはオススメです。そこそこ美しくそこそこサイズのあるものが手頃な価格で手に入ります。

タンザナイトのスペック

英名:Tanzanite、Zoisite
和名:灰簾石(かいれんせき)
成分:(Ca2Al2Al[OH|O|SiO4|Si2O7]
色:青、紫青
透明度:透明
結晶系:斜方晶系
モース硬度:6.5~7
比重:3.30
屈折率:1.69~1.70
複屈折率:0.010
多色性:強い三色性
偏光性:あり

タイトルとURLをコピーしました